自ら毟り取った角

便乗いたしました。



「自信」って、与えられるものなんですかね。


私は、「自信」ってもんは自分で勝手に構築するものだと思ってます。

誰か他人が「君に自信をあげるよ」とプレゼントしてくれることを待っている人は、いつまで経っても「自信を持つ」ことはできないし、「自信があると実感する」こともできないんじゃないかと。

自分で勝手に構築するものだから、
その「自信」に根拠も裏付けも何もないから、
その「自信」は誰かや何かに壊されることもない。
もしくは、壊されたとしても自分で再構築できる。

いわば、虚像みたいなもの。

そんな虚像の「自信」なんて嫌だ！と、青年らしい潔癖さを持つことは勝手ですが
「自信」自体は虚像であっても、その虚像に基づいて行動したことが実像を結ぶということは、現実世界によくあること。

俗っぽい例えを挙げるのなら、
不細工でも、なぜか自信があって連絡がマメな男はモテる
みたいなことです。

なんであいつ、あんなに自信あるの？と周囲が疑問に思ったところで、自信を持っているのはその人自身なので、「なんで？」という疑問は空滑りする。
理由や根拠なんて、ないんだよ。
あるか、ないか。
それだけ。

虚像の自信に基づいて実利を得る人のことをバカにするような潔癖人間が「正しい」とは限らない。


自分に自信がないと他人に優しくできない。
というのは、
自分に自信がないと、自信がない自分にばかり意識が向いてしまって、他人がどうしているのか見る余裕がない。

自信を持てない自分を憐れむばかりで、自信がないことによって他人を傷つけている事実に気づかない。

自分は空っぽだと感じていて、常に不足感があって、もっと満たされたいと渇望しているのに、肝心の入口を堅く閉ざしているから、他人からの気持ちを受け入れることができない。

閉ざしているのは自分なのに、充足感を得られない原因を自分以外に求める。



こういった不完全で不十分な姿が、時として魅力的に映る。

それが「若さ」ってものじゃないか。

「若さ」という言葉が適切じゃないなら、「少女性」とか「青春」とか「ピーターパン」とか、そういうもの。

人生の中でほんの一瞬、限られた時間しか放たれないものだから、特別に思える。

でもそれは、「放たれない」というよりは「放ってはいけない」もので、
いつまでも子どもでいることはできないし、
いつまでも「大人になんかなりたくない」と駄々をこねることもできない。

モラトリアムは「もうすぐ終わりが来る（期限がある）」という意味までも含んでいるから、こちらにメランコリックな気分を喚起させるのであって、
長生きすることが折り込み済みのピーターパンなんて、魅力的じゃない。



ユニコーンの角はコンプレックスの象徴だとしても、
ユニコーンは自分の角を心の拠りどころにしているのだから、角を死守すると思うよ。

だって、角がなくなってしまったら、自分に自信がないことの言い訳がなくなってしまうから。

「この角があるから、人とうまく接することができない」、「この角があるから、人に好かれない」と言えていたのに、
もし、
角のない自分が誰にも愛されなかったらどうしよう。

角があってもなくても、実はそれなりに愛されてました。
というのが最も多いパターンかと思うけど、本当にそうなのか事前に確認することはできないわけで。

角という言い訳で武装しているうちは、自分に注がれる愛情に気付けないしね。
他人の気持ちに鈍感になってしまうしね。


今の私は、「大人になりたくない」と思うこともなく、「子どもに戻りたい」とも思わないです。
ただ、「もうちょっと、しっかりしないとな」と思っています。
この、「もうちょっと」がポイント。

いろいろと回り回って、
今の私にとっては、
角があることによって引き起こされる感情の揺れや、角を振りかざすことによって他人や自分を傷つけることや、その他諸々にウンザリしたので、
自ら両角を毟り取りました。


そしたら、元から自分には角なんて生えてなかったってことを、知った。